株価低迷(投資顧問)

このところ株式市場は持ち直していますが、期待の個人投資家はなかなか近寄ってはくれません。

そんな中で、デイトレーダーと呼ばれる個人投資の存在がクローズアップされています。証券業界の一番の悩みは、手数料自由化によってディスカウントブローカー並みの価格破壊が進み、取引コストが引き下げられたのにもかかわらず、個人投資家のリスクマネーが株式市場に向かってこないことにあります。

理由はいくつか上げられています。

日本人特有の気質で、貯めるのは好きだけど危険を冒してまで増やすのは避けたい。

不況に原因を求める声もあります。賃金は目減りし、雇用さえも不安定なのでは積極的な投資行動は期待できない、証券市場改革よりも経済建て直しが先決、というものです。

一金融ビッグバンの狙いとしたグローバルスタンダードは単なるお題目に過ぎない。

結局は、富のシフトと海外勢を招き入れるための手段だった。

その裏で中小証券は切り捨てられている」(証券関係者)と話しています。

ただ、冷静に見ると、これだけの低金利で投資環境は決して悪くはありません。

個人マネーを呼び込めないのは、投資教育をおざなりにしてきたしっぺ返しのような気がしてなりません。証券業界は、株式投資を学んでもらおうと、ゲーム形式で教育現場が参加できる仕組みを作って十年近くになります。

それでも世論調査では「八割が証券投資はしたいと思っていない」のが現状です。

草の根的な投資マインドを醸成していこうと、米国をモデルに始めた「投資クラブ」も効果を出せずじまいになっています。

証券業界の一層の奮起を期待したいところです。

金融ビッグバンの目的は、資本市場の強化にありました。

日本の資金調達構造は、企業が銀行からお金を借りて設備投資をする、間接金融に偏っていましたが、これを企業自らが投資家から必要資金を調達する直接金融の比率を高めていこうとしたわけです。仲介者である証券会社の制度を大きく変える必要がありました。

そのひとつが、従来の免許制から登録制への移行です。

一九九八年十二月には、証券会社は登録するだけで業務を始めることができるようになり、国内の銀行や異業種などがこぞって証券業に参入してきました。

二〇〇三年七月現在の登録証券会社数は二七五社あり、このうち外国証券は四十四社となっています。

ピークには三百社に届こうかとの勢いがありましたが、外国証券の撤退が目立っています。登録制によって自由な競争が進む裏返しで、証券会社に破綻の恐れも出てきます。

そこで、証券会社には顧客資産の分別管理と、万が一に備えた投資者保護基金が設立されました。

証券会社は株や債券の売買を取り次ぐだけではありません。

企業の資金調達でも重要な役割を担っています。

また、破綻に備えたセーフティーネットも用意されています。預貯金金利は一%に満たない超低空飛行が続き、百万円を一年間預けても、利息はわずか三百円にしかなりません。
だからといって、株式投資にはなかなか向かいません。

「株は怖いもの」というイメージが強いのではないでしょうか。

でも尻込みしていても始まりません。

証券商品や証券会社をよく知って、その上で許容できるリスクの範囲を理解しつつ、上手に付き合うべきです。証券会社は株を売買している金融機関と思いがちですが、役割はそれだけではありません。

証券会社には、(1)委託売買業務、(2)自己売買業務、(3)引受業務、(4)募集売り出し業務という、大きく四つの業務があります。

委託売買業務はブローカー業務とも言われ、証券会社の伝統的な仕事です。

顧客から株や債券などの有価証券売買の注文を受けて市場に取り次ぎます。

自己売買業務はディーリング業務とも言われます。証券会社が自己資金で有価証券を売買する業務です。スナップアップ投資顧問によると、地場証券には、このディーリングを収益の柱にしているところが多く見受けられます。引受業務はアンダーライティング業務とも呼ばれます。

企業が新たに株式や社債を発行する際に、証券会社が発行会社に代わって有価証券を引き受ける仕事のことです。

引き受け後に証券会社は投資家に販売しますが、もし売れ残りがあれば、自ら買い取らなければなりません。

募集売り出し業務はセリング業務とも呼ばれています。

発行市場にかかわる業務で、発行会社の委託を受けて販売するにとどまるため、売れ残りを買い取る責任は負いません。

経営不振で銀行の経営支援を受けたため、各社ともメガバンクの傘下に入りました。

個品と力ードのバランスを取る経営スタイルが、今後求められています。信販業界の大手各社は、このところ激動に見舞われています。

バブル期に行った不動産投融資が不良債権化して経営を圧迫し、メインバンクから数千億円にも上る特別融資を受けて、何とか最悪の事態は回避しました。

昨年実施された大手銀行の特別検査では、ゼネコン、不動産などと並んで「問題五業種」のひとつとして、マスコミ誌上で話題になりました。もうひとつはメガバンクグループへの接近です。

巨額の支援融資を受けたことで、都銀の影響力がさらに強まり、実質的にグループ入りしました。

信販は比較的高額の商品購入で利用される個品割賦が主力商品のひとつなので、加盟店への立替払いに応じるだけの資本力が不可欠です。

業績好調な時期は株価も安定していたので、市場からの資金調達も可能でした。額面割れするほど株価が落ち込み、メインバンクの支援で再建するしか方法はありませんでした。

頼みのメインバンクが破たんして支援できずに倒産したのがライフです。

このことが示すように、資金的な裏付けをなくすと、現在の信販会社はたとえ本業が順調でも、たちどころに脆弱な体質に陥ります。

それだけ不良債権という「負の遺産」が重い十字架になっているのです。メインバンクが信販会社に対して当分の間金融支援を続けること、その間に信販は本業でできる限り業績を回復させることが、今後の経営の大前提になっています。

業界各社はいま、「本業回帰」が共通のスローガンになっています。


業界大手の事業多角化が進まなかった大きな理由は、本業(無担保ローン)の利益率が高いからです。商品価格(貸出金利)の三割近くが純利益になるのは無担保ローンをおいてほかにありません。

この利益率と比較すれば、どんな事業も見劣りします。

そのため、新規事業が育たなかったのです。

新規事業は多くの場合、本業の経験がモノをいいます。

その典型が最近急増している銀行との提携による保証業務や債権回収(サービサー)業務です。

銀行が最も苦手にしていた個人融資の審査や回収、督促は、消費者金融にとって最も得意とするスキルです。クレジットカードへの進出も目立っています。

二〇〇〇年に業界第二位のアコムがマスターカードを発行し、大手各社もこぞって追随しました。

いまのところ、既存の利用者にカードを発行している段階で、まだまだこれからのようです。業界大手はここ数年、「総合金融ビジネス」を目指す方向にあります。

主力業務で培ったノウハウを生かし、それに付随する周辺業務を展開していきたいと考えているのです。

都銀との合弁会社や保証業務、クレジットカード化などは、総合金融化の表れといっていいでしょう。

大手の一角、アイフルが二〇〇一年三月に信販大手のライフを買収し、業界をアッと言わせました。もともとキャッシング事業に熱心だったライフを傘下に収めたことで、同社の業績は大手他社を尻目に急伸し、グループの収益では業界トッ.フに立っています。

アイフルがM&Aによって力を増したことで、業界大手の実力は「グループカを示す連結べースで判断されていく」(業界関係者)との見方が出て崇ています。

主力商品に頼る時代から、金融周辺業務で競う時代に入っています。

いかに多角的な事業を展開していくかが問われています。

この二十年間は、毎年増収増益を更新してきた消費者金融業界ですが、不況の長期化と少子高齢化で業界の成長は鈍化傾向にあります。少子高齢化がなぜ業績に影響するかというと、消費者金融の借り手の多くを二〇歳代の若い層が占めているからです。

収入が低くても消費意欲が高い若年層の人口が将来減少すると、消費者金融の利用者数が減るのです。

これに不況が加われば貸出残高は頭打ちになり、債権内容も悪化すると考えられています。

このため、業界では主力商品の無担保ローンだけに頼るのでなく、多角的に事業を行い、各部門で売り上げを伸ばしていくことが経営の大きな課題になっています。大手各社では、一九九〇年代初めから事業多角化の動きを見せていました。

経常利益が一千億円を超えるなど、空前の収益を記録し「儲け過ぎ」の批判も出た時期です。

しかし、その頃の新規事業はカラオケ店やレンタルショップ、ゴルフ場など、時流に便乗したもので、目立った業績は残せませんでした。
業態別に見ると、リボルビング金利では銀行系が一八%前後と最も低いですが、金利が低いということは、それだけ審査が厳しいということでもあります。審査を厳しくすれば、優良顧客は集まりますが、収益は上がりません。

審査基準を甘くすれば、貸し倒れが増えて損失も増えます。個人融資では、そうした審査のあり方が企業の経営スタンスと直結しており、リスクと儲けのバランスをどう考えるかによって、金利も決定されているのです。
ノンバンクのローン金利は銀行に比べて割高ですが、リスクと儲けのバランスを考えた上での経営判断でもあります。現在、貸金業の上限金利は二九・二%で、銀行の融資金利(利息制限法)は最大二〇%です。

ノンバンクの金利は銀行のローンに比べて高いと言われますが、その内訳を見てみましょう。

およその見当ですが、大手消費者金融のローン金利は約二五~二九%の範囲です。

仮に二七%とすると、二%が広告宣伝費、三%が人件費、二%が調達金利分、貸し倒れ費用が三%、システムやテナント使用などの経費が七%、残り一〇%が儲け、という構造です。資金調達費用は、大手の場合は市場から調達ができるので比較的抑えられますが、問題は貸し倒れ費用です。

多重債務や自己破産が急増していますので、この費用は毎年増加しています。

貸し倒れ費用が増えれば儲けの一〇%は減るので、広告宣伝費や人件費を削るなどの企業努力が必要になります。信販、クレジットカードの場合は、店舗を持っていないので七%の経費のうちテナント費用などは発生しません。

その分の経費が上限金利の差になっていると思われます。

生き返ったライフ(投資顧問)

長銀の破たんで債務超過に陥った信販大手のライフは、GEキャピタルやオリックス、スルガ銀行など国内外の金融機関が争奪戦を繰り広げましたが、二〇〇一年三月に消費者金融大手のアイフルに買収されました。ここでも消費者金融の勢いが証明されています。

ライフは二〇〇三年三月期の決算で、経常利益八〇億円と創業以来の最高益を計上するなど、立ち直りの早さを見せています。アイフルはライフの貢献で、消費者金融業界では収益トップに浮上(連結べース)しました。

マネジャー選定のプロセスには、膨大な労力がかかることが理解できるだろう。とくにヘッジファンドは個々のマネジャーの資質に負うところが大きく、外形的な判断基準を一律に当てはめて評価することはできない。

また、対象があまりにも多いことから、第1次スクリーニングでいかに有力候補を早期に見出すかが、実務上は重要である。

ヘッジファンド業界でトップランクと評価されるマネジャーは全体の2~3%にすぎないといわれている。

その多くがファンドをクローズしており、新規の投資家に対しては門戸を開いていないことも厳しい現実だ(法的には受付けていても、運営上、実質的に新規投資を受付けないことをソフト・クローズという)。

有能かつ投資対象となり得るマネジャーを発掘するという作業は、現実には何らかの人的ネットワーク等から糸口を見出す場合が多く、定性的な情報収集がきっかけになっているものだ。定量的作業は、理論武装も兼ねた補完的手段として位置付けられるのが現実である。

新興マネジャーも含む膨大なマネジャーを管理するには、データベースの管理や分析のために、多くのコストを割く必要があり、それは投資家にとってのコスト増にもつながる。

従って、いかに効率的なオペレーションを行えるかも、重要な要素なのである。

データベースの構築は定量分析作業の第1歩だが、ヘッジファンドの場合、データや戦略カテゴリー分類の正確性には不安がある。有能なゲートキーパーは、データのメンテナンスには十分なコストをかけて正確性を確保し、運用スタイルの見極めと戦略カテゴリーの分類に時間と労力を割いている。

株式ロング・ショートとリスク・アービトラージを混合したマルチストラテジーを採用しているマネジャーをどちらのカテゴリーに分類するのか、といった実務上悩ましい問題があり、定性分析の過程で十分なチェックが必要だ。
欧米の証券会社は、ヘッジファンドが行っているような運用を従来は自己勘定で行っていた。

しかし、最近では自己勘定トレーディング業務は多くの証券会社が規模を縮小し、独立していった外部ヘッジファンドを有望な顧客として囲い込み、プライム・ブローキングに注力している。クレジット・リスクや市場リスクを負うことなく、ブローキングや販売面で魅力的なビジネスに成長したため、各証券会社は新興ヘッジファンド・マネジャーを支援し、投資家に紹介する機会を用意するところもある。

次に、こうして集まってくるマネジャーのスクリーニングである。

多くのファンド・オブ・ファンズ・マネジャーは、何らかの独自データベースを構築し、ヘッジファンドに対する格付を行っている。

まず、膨大なヘッジファンド・ユニバース(6000社)の中から、足切りを行う。第1次スクリーニングは、トラックレコード、リスク、戦略の種類、マネジメントチームの経験等を定性・定量両面で評価する。
第1次スクリーニングを通過したファンドには第2次スクリーニングに進む。

この段階で50%のファンドが脱落する(3000社)。

この第2次スクリーニングでは、イーメールを使った質問等に基づくマネジャーとの初歩的な面談調査、戦略分析等が行われる。
満足な結果が得られたもの(600~1000社)は第3次スクリーニングへ進む。

直接面談を中心とするマネジャー・チェック、規制やコンプライアンスも含むバックグラウンド調査、バックオフィス等オペレーショナル・リスクの評価、取引証券会社や外部の第三者に対するインタビュー等、更なる詳細なデュー・デリジェンスが実施される。満足な結果が得られたものは投資候補のバスケット(100~150社)に入る。

投資候補のバスケットの中で、実際に投資するファンドを選択する。

この段階では、リスク・リターン特性を十分に配慮して、ポートフォリオの組成が慎重かつ大胆に決定される。

一般のファンド・オブ・ファンズの場合、バスケットには20~40社程度のマネジャーを組入れることが多い。投資実行後も、投資候補バスケットに入っているファンド(100~150社)とは投資実績の有無に関わらず定期的にコンタクトし、レバレッジ、リスク、スタイル偏向、パフォーマンス等をモニターする。

問題が発生した場合は、資産配分の変更を行い、ファンドの置かれているランクを変更する。

データの収拾(投資顧問)

ポートフォリオ組成の第一歩は、ヘッジファンドのデータベースを構築または取得することである。

最近では、一般からもアクセスできる有料無料のヘッジファンド・データベースがでてきた。そのような一般的情報からの絞込みは、膨大な手間と労力がかかる作業であり、実務的ではない。

そこで、多くの投資家やファンド・オブ・ファンズ・マネジャーが重用するのは、人的ネットワークである。

マネジャーの世界は存外に狭い。

最近は、運用戦略の専門化が進んだ結果、マネジャーの属する業界で主要なプレイヤー同士はある程度何らかの知遇を得ている場合が多い。これは、わが国でも各業界の主要プレイヤー達の知名度は上がり、業界内での評判が確立していることを思い起こせば納得できるだろう。

そして、大手金融機関等でこれら主要プレイヤーが育てたジュニアが独立する際にも、メジャー・プレイヤー問では間接的にその評価が伝播する。

こうして、人的ネットワークは、海外においても最も重要な情報ソースとなっている。それ以外には、取引のカウンターパーティーとなり、時には販売でも協力する証券会社を通じた情報や、外部機関が主催する大規模会議等も活用される。

多くの困難(投資顧問)

ヘッジファンドへの直接投資には、これまで説明したように多くの困難が存在する。ヘッジファンドの戦略は、非常に難解で複雑なものが多く、マーケット・ニュートラルと称される戦略も、実際には大きなリスクをはらんでいる。

また、運用資産時価を正しく算出しているかを確認したり、限られた数のヘッジファンドで最適分散効果を得る事は難しい。

ドキュメンテーションは英語であり、ファンド関係者の地理的所在もグローバルに分散している。優良ファンドの多くは、一見の投資家には門戸を開いてくれないという悩みもある。

要するに、現実問題として、世界中に6000以上あるといわれ、公には積極的営業活動をしていないヘッジファンドの中から優良な投資対象を見分けて、適切なポートフォリオを構築することは容易ではない。

そこで、ファンド・オブ・ファンズやゲートキーパーを利用するのが現実的な代替策となる。コストが二重にかかるという問題点はあるが、それを上回るメリットを認める投資家も多い。

出発点(投資顧問)

ヘッジファンド投資のスタートは、ヘッジファンドの特性を理解し、投資家自身のポートフォリオに組み込む絶対リターン型資産として認識することである。ポートフォリオ全体の中で、何を目的としてどの程度の組入れを行うのかを決定する必要がある。

無論、実験的に始めてみる、という投資家もいるだろうが、目的を明確化しない漠然とした形で投資を行うと、その後の評価が困難になる。

少なくとも、期待リターン・リスクを明確化しておくことが求められる。コンセンサスが出来上がったら、(あるいは、コンセンサス作りと同時に)進める作業は、ヘッジファンド選定を自ら行い、ヘッジファンド・ポートフォリオを自ら構築するのか、あるいは、ファンド・オブ・ファンズまたはゲートキーパーを利用して、そのプロセスをアウトソースするのかを決定することだ。

流動性(投資顧問)

リスクの次に、ヘッジファンド投資の問題点を整理しておこう。

まず第一に、流動性がある。

流動性とは、投資家にとっての換金性を指す。

ヘッジファンドの流動性は低い。戦略によっても差があるが、四半期ごとまたは毎年でないと換金できないのが一般的だ。

最近では、毎月末の解約を認めるヘッジファンドも増えてきたが、実績にあるマネジャーほど、投資家からの人気を背景に、強気の条件設定をするケースが多い。

解約換金のための時間がかかることも留意しておきたい。

通常、解約日の30~60日前までに書面による事前通知を行う必要があり、実際に解約資金が払い出されるには、解約日からさらに30~60日を要することが多い。解約申込から資金受領まで、最長4カ月間近く要する場合もある。

また、ロックアップと称する資金凍結条件を設定している場合も多い。

投資後一定期間、解約を認めないという条件である。

一般的には6~12カ月間、最長では3年間の払出禁止を定める例もある。解約そのものは可能でも、早期解約にはペナルティーとしての解約手数料を付すケースもある。

人気のあるマネジャーほど、安定した環境で運用に専念するために、長期間コミットしてくれる投資家を期待する。

資金集めが思うに任せないマネジャーは、流動性を大幅に譲歩し、不安定な資金繰りでも何とか資金を集めようとする傾向がある。

従って、ファンドとしての流動性が高ければ、投資対象として優れているかといえば、必ずしもそうではなく、そのために犠牲になっているものがあるかもしれない。

ここでも、需給関係が成立していることを理解しておく必要があるだろう。特に、ファンド・オブ・ファンズの場合、有力なファンドをポートフォリオに多数入れている場合には、流動性を高めることは難しくなるという背反性から逃れられない。

しかし、まれに相互の力関係から特別優遇を受けるファンド・オブ・ファンズが存在することも確かである。

これは、ファンド・オブ・ファンズの付加価値のひとつであろう。
それと並んで重要なのが、ビジネス・リスクである。

ビジネス・リスクとは、ヘッジファンド・マネジャー、ファンドに関与する関係者(トラスティー、カストディアン、プライム・ブローカー、アドミニストレーター、法律事務所、監査法人、販売証券会社等々)の信用リスクや、ストラクチャー自体に潜むリスク(法律、コンプライアンス、規制、会計、税務等いわゆる広義のオペレーショナル・リスク)のことである。ヘッジファンド・マネジャーの専門は投資リスク管理であり、優秀なファンド・マネジャーが優秀な経営者(ビジネス・マネジャー)であるとは限らず、現実にはそうでない場合も多い。

ヘッジファンド投資に当たってのデュー・デリジェンスで最低限必要なのは、むしろこのビジネス・リスクに対するチェックであるといえるだろう。

オフショアには6000を超えるともいわれるヘッジファンドが存在し、その他の投資ビークルは数え切れないほど存在している。英語による分厚い契約書でもカバーしきれない定性的な情報は、人的なネットワークを利用した調査によって、初めて確認できるものも少なくない。

ヘッジファンド業界で起こった重大なイベントを概観したい。

アカデミズムが投資の世界に導入されて以来、人間行動に関する数学的なモデルは著しい発展を示したが、それに不吉な兆候をもたらす出来事が1987年10月に起こった。

ブラック・マンデーである。この一大イベントはともすると株式市場暴落の1ページに数えられるだけと考えている市場参加者もいるが、それ以上に、1980年に設立されたポートフォリオ保険会社LORが崩壊したことを知っておかねばならない。

LORは、資産が急増した米国年金基金や投資信託、保険会社に対して、プットオプションの擬似トレードを常時市場で繰り返すことにより、プットオプションの損益曲線を提供しようとした。

CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)がS&P500等先物取引を導入した後は、先物のデルタ・ヘッジを繰り返すことで、株価下落に対する保険を提供しようとしたのである。

1987年10月14日に米国議会が企業買収に対する税制優遇措置を縮小する法案を可決し、ベーカー財務長官がドル安誘導を発表すると、軟調だった米国株は下げ足を早めて、結局翌週明けの18日には市場オープンと同時に大暴落したのである。ダウは1日で22.6%下げたのだが、相場が下がるときには先物を売り建てなければならないLORは、シカゴの先物市場でヘッジ売りをさばききれなかった。

投資家は、ポートフォリオの保険を買っているつもりだったのだが、結局、この保険は効かなかったのである。

投資家は大損失を被り、LORは破綻した。

この後、コンピューターによるプログラミング売買が下げの主犯と騒がれたが、それがLORを中心とするポートフォリオ保険だったのである。

投資家は、市場すべてが下げたためにまったくリスク分散効果を得ることができず、保険と考えていたプログラム売買も機能しなかった。

ゆえに以降、金融機関とのオプション契約という法的に有効な取引を求めることになる。マーケット・メーカーはマーケットが一斉にポジション調整に入った場合の流動性リスクを強く認識させられた。

ヘッジファンド・マネジャーが表舞台に出ることにはならなかったものの、以降のイベントを示唆する重要なものだった。

「リスク」と「投資効率」の分析は全て常時同ロットのポジション(たとえば債券先物1枚)での運用を前提としてきた。

ところが実際の運用では、トレードごとの確信の度合いによって、リスク許容度を測りながら、トレードサイズを調整することも多い。リスク許容度の測定には、インプライド・ボラテイリティに基づくバリューアットリスク(VAR)やストレステスト等が利用される。

マーケットに参加することで受けるリスクを、自らの許容量の範囲内に収めるため、能動的にリスク管理する方法のうち、シンプルかつ重要なもののひとつがこのポジション・サイズの調整である。

ここではトレードサイズのさまざまな調整法を簡単に紹介する。トレードサイズの調整法として、ロング/ショートのポジション切替えの都度、建てる枚数(エクスポージャーまたはポジション量)を変化させる「ドテン売買時のサイズ調整」と、1回のロングもしくはショート・ポジションのなかで建てている枚数を調整する「ピラミッティング手法」の2つに大別できる。

(1)リスク金額固定法ロング/ショートの切替わりごとに常に同枚数でトレードするいわゆるドテン売買(サイズ調整なし)。

サイズ調整を行わない、最も一般的なパターンである。

(2)マーチンゲール(倍賭け)負けが続いたらそろそろ勝つ順番だ、と考えてポジションを取る方法である。

ここでは1度負けが発生(シミュレーション上)するまで実際のポジショニングを見送り、1回負けで1枚、2連敗で2枚、...、1回勝てばポジションをゼロにする方法を用いる。

代表例がマーチンゲール(倍賭け)である。

負けた次のトレードではオーダーの枚数を2倍に、更に負けたら次は4倍に、さらに8倍、...と勝つまでポジションを倍にし続けることにより、(資本力の続く限りにおいて)最終的には必ず勝つことができる。

もっとも、26回連続で負けた場合には6700万倍のポジションをとらなければ勝てない。投資家が負けが込んだ場合には相当な心理的・金銭的ストレスが発生する。

紙面の関係から詳細は別の機会に譲るが、実際の市場を元に検証してみると、マーチンゲールは枚数調整を加えないリスク金額固定法と比べて累積損益とドローダウンが小さく、明らかにパフォーマンスが優れている。

このことは、現実のマーケットに「リターン・リバーサル」(儲かった次回は損することが多く、長期的に運用すれば過去の平均パフォーマンスに収敏されるとする思想)が実在することの一つの証でもある。

利益の上がった次のトレードは通常の精神構造を持つ人間であれば強気にポジショニングするであろうし、逆に負けたあとでポジションを大きくとることには困難が多い。このような市場参加者が多いからこそ、この逆の運用スタイルが有効ということなのであろう。

その他には、リバース・マーチンゲール(=パーレイ)、ケリーの公式、リスク%固定法、オプティマルf(最適賭け率)等の方法が良く知られている。

いずれにしてもポジションテイクに際して、ポジション量をどうするか、その方法次第では勝てる手法でも結果的に負ける可能性があることには留意を要する。

リスク管理と資金(ポジション)管理は重要だ。

シャープ・レシオ(投資顧問)

(平均収益率一無リスク金利)÷収益率の標準偏差=シャープレシオ。

運用評価の尺度として最もよく利用される指標のひとつである。

この指標では分母に「収益率の標準偏差」が用いられる。投資顧問によると、この指標におけるリスクとは"損失の発生"ではなく"収益の不安定性"だ。

毎年のリターンが同水準であるならば、+20%~-20%のストラテジーより、+5%~-5%のほうが好ましい。

この指標では、大幅な利益も大幅な損失と同様にリスクとなる点には注意が必要だ。

ヘッジファンドのような絶対リターンをターゲットとしたファンドに対する評価をする場合、分母をドローダウンとする指標の方が本来は適当だと考えることも可能だ。投資顧問によると、インデックス運用において、「収益率の標準偏差」はファンドをインデックスに連動させるためのコスト増要因であるとして"リスク"として認識する場合には有効だろう。

また、この指標には時系列の概念が含まれていない。

「リターン」と「リスク」の比率を指す。投資顧問によると、1トレード・1単位リスク当たりどれだけの収益が得られるか、でシステムの有効性を計測しようとするものである。

この指標には「継続運用」という概念が盛り込まれていないことには注意しなくてはならない。

システム運用を評価しようとする場合、継続的に売り買いすることが前提だが、この継続運用に伴い発生するさまざまなリスク(連続的な損失計上によるドローダウンの発生など)はこの指標では判断できない。

通常、「リスク・リワード・レシオ」といえば"平均勝ち幅/負け幅比"を指すことが多い。投資顧問によると、確率は度外視し、幅だけで判断するのである。

1回の損益が損失と利益のいずれに振れ易いかを傾向としてみるのに有効であるが、確率を考慮していないため、例えば過去のパフォーマンスが1勝99敗でその1勝が大勝であった場合、この指標は非常に良い数字となってしまう。

【5日移動平均】2.44倍(平均勝ち幅...88.6銭、同負け幅...36.4銭)
【10日移動平均】3.24倍(平均勝ち幅...1円28銭、同負け幅...39.4銭)

日数の長い10日のほうがポジショニングの切替わりが遅く、損益の変動幅は大きい。

投資効率とは、本質的には「欲しいもの」÷「欲しくないもの」で算出される。

通常は「リターン」÷「リスク」が用いられ、1単位リスク当たりどれだけの収益を獲得できるかを示す指標とされている。投資顧問によると、「リターン」「リスク」ともさまざまなものが考えられるため、投資効率についてもその全てをここで紹介することはできない。

分母を「リスク」でなく、「取引コスト」(=「手数料」+「ポジショニングに入るポイントと実際の約定値との価格差(スリッページと呼ばれる)」+「投資資金の調達コスト」+「税金」など)で割ることで、"コスト対効果"を算出することもできる。投資顧問によると、分母を「トレード期間」とすれば、単位期間内でどれだけ収益を上げることが可能であったかを計測することもできる。

例えば年内に勝負をかけたい場合など、トレードできる期間が拘束されている投資家にはこうした指標が向いているだろう。

ドローダウン(投資顧問)

これは、直近の累積損益線トップからの落ち込みを指しており、最悪のタイミングで投資を開始した場合の損失累計と同じことになる。投資顧問によると、10日移動平均のほうがトレードの発生頻度は緩やかであり、手数料などの取引コスト低減には有効だ。

累積利益は大きいが、リスクも大きいのである。投資顧問によると、従って、各トレードのリスクを同量とするには、10日移動平均のポジションを少なめとする必要がある。

平均負け幅(投資顧問)

絶対リターン運用に際してのリスク管理・ポジション管理の代表的概念と手法を紹介する。投資顧問によると、日本長期国債先物のトレンド・フォロー型マネージド・フユーチャーズ運用例である。

まずここで考えなければならないのが、平均負け幅=「平均損失」である。

これについては、期間の長いものほどリスク/リターンの絶対値は大きくなる傾向がみられる。

ロングとショートの切替えタイミングが遅くなるからだ。投資顧問によると、従って、リスク管理上は、これに連動する形でロスカット幅とポジション量(建て枚数)を調整する。

このケースではロスカット幅は10日移動平均のほうを大きめに、また建て枚数は10日移動平均のほうを少なめにすべきだろう。

逆に「最大損失」を考えた場合、上記と同様だが、こちらは過去たった1回しか発生していないケース(アウトライアー=異常値)もある。投資顧問によると、最悪の事態を想定することも重要ではあるが、統計的な有意性は低い。

あるドイツの銀行がロンドンの銀行に電話をして、「直物電信のドル・スターリングのレートはどのくらいですか」と単純な尋ね方をし、たまたま、ドイツの受渡日とイギリスのそれとが異なっていれぽ、ドイツの銀行がイギリスの銀行の示した為替レートに同意して取引を決め、そのすぐ後に受渡日の違いに気がついたとしても、その取引をやめるわけにはいかない。投資顧問によると、誤解が生じたとき、不注意な言葉を用いた者が罰を受けるのである。

この種のミスが生じた場合の多くは、両当事者とも角張らずに決済をしてしまうが、余分にかかった費用は、ミスを犯した側で負担する。

決済が完了した後、エラーが明るみにでたときは、当座貸越の利息支払いが生じるが、上記の場合には、ドイツの銀行がそれを負担することになる。

たとえ、最初の銀行ないし顧客が受渡日を明確にしない場合でもf依頼を受けた銀行は、受渡日を含めたすぺての事項について、電話を切る前に復唱すべきであろう。投資顧問によると、当事者の一方の不注意から生じるミスを十分に避けられるだろう。

結局のところ;直物レートは、先物レートのひとつである。

中央銀行のなかには、海外で起きた当座貸越や残高から直物ポジションを除くことを認めているところがある。

というのは、直物の期日が到来する前に、銀行は中央銀行が設けた枠内にオープン・ポジションを修正することができると考えられているからである。投資顧問によると、直物取引を活発にやる銀行は、決済日の翌日にポジションを調整するところが多い。

買越しや売越しは、翌日ものないし翌日と翌々日とのスワップによって調整され、これらがどのようなプロセスを経てなされるかについては、の先物相場のところで述べることにしよう。
小切手がニューヨークで引落されるなら、銀行は自己の顧客と同じようにドルの買持ちになり、このためにドル残高の有効な利用ができなくなるからである。

週末をはさんだときの直物取引は、いつが受渡期日になるのであろうか。

イギリスにおいては、銀行が土曜日と日曜日を休むので、木曜日か金曜日かになされた外国為替取引は、金曜日ないし月曜日が休日でなく、しかもその取引がドルとなされる場合なら、ニューヨークが月曜日も火曜日も休みでないとき、それぞれ月曜日と火曜日とが受渡日になる。投資顧問によると、決済する国での金融センターの休日が、その間にはさまれていても問題ではない。

二営業日とは、為替を売買するセンターでの営業日によって決められる。

異なる国にいる顧客が為替取引をする場合、正確な直物受渡日について不安が生じるときがある。

ユーロクフルrやニューヨークにおける日付は、ロンドンにおけるそれと必ずしも同じではない。

その日付についての誤解を避けるため、直物相場を尋ねるとき、尋ねた人の考えている日付を必ずそのとき忘れないように加えておかなけれぽならない。投資顧問によると、「ドル対スターリソグの直物レートをお宅はいくらにしていますか」「ドル対ユーロのレーrはスポットでいくらですか」。

このようなあいまいな質問であれば、その非は尋ねた側にある。

一方の顧客が、ニューヨークにおいてドルの現金決済をせず、銀行にドル小切手の発行を依頼するとき、このルールに例外が起こる。投資顧問によると、小切手を切った日に二え一ヨーク市場が開いているかどうかは、重要な問題ではない。

その小切手が当日呈示されることはまず考えられないからである。

そして、この小切手がロンドンの銀行の窓口で支払われるなら、このようなハプニングが起こる可能性は小さいだろう。

ロンドンで小切手が呈示されたとき、次の2つの対応がある。

そのひとつは、その銀行がスターリングを対価にしてドル小切手を買取ることである。投資顧問によると、ドルの支払いは生じない。

もうひとつは、ニューヨークで支払いがなされる場合であり、それは当事者のいずれかの指示による。


「二営業日」によって何が意味されるか。

まず、ロンドン市場でなされている直物取引の実務について眺めてみよう。

全く同じ原理を採用している、他の金融センターでは、休日が間にはさまれるなどの理由から、正確な直物決済日がロンドン市場と違うこともあり得る。投資顧問によると、ロンドン市場において、月曜日に約定した直物取引は、イギリスで火曜日が休日でないかぎり、翌水曜日に決済しなけれぽならない。

当然のことだが、ドルをスターリングに替えるという取引の際、水曜日がたまたま、ニューヨークの休日にあたっていれば、ロンドンと二z一ヨークとがともに営業をしている木曜日がスポット・デー、つまり決済日となろう。

外国為替取引とは、ある通貨を別の通貨に交換することであるので、それらの通貨が引き渡された

直物為替相場り、あるいは支払われたりする金融セソターは、ともに開いていて営業をしていなけれぽならない。

もしそういうことにならなけれぽ、基本的な原理(補償された価値原理)が働かなくなる。

この補償された価値とは、契約の両当事者が同じ時刻にそれらの通貨を受渡しすることを意味する。投資顧問によると、少なくとも理論上、信用リスクは免れる。

実際には、もちろん、二s"'ヨークとロンドンとにおいて同じ時刻に決済をするのは不可能である。

単純な理由からスターリングの決済は、ドル決済の前に行われなければならない。

その理由とは、ロンドンの銀行が締まる時刻頃に、ニューヨークの銀行が店を開くことである。投資顧問によると、「補償された価値」の原理が働くのは、両当事者とも相手の資金を利用することができない点にある。

利用できれぽその時刻には、違った目的のためにドルとスターリングとを活用してしまうであろう。

直物為替相場(投資顧問)

受渡日に期間の幅がある場合、当日ものと翌日ものの2つのレートが利用し得るが、その場合、当日か翌日かによってスポット・レートを調整しなけれぽならない。投資顧問によると、そのため、取引が始まる前に為替を申込んだ企業は、どちらの日を優先するかを知らせなけれぽならない。

ヨーロッパのいくつかの金融市場において、一営業日前に支払い、ないし口座振替の通知が必要とされるので、ポンド・スターリング以外のヨーRヅパ通貨Y'おいて、当日取引、つまり現金取引がなされることは滅多にない。

もし、そのようなケースがあるとき、その為替レートは、スポット・レートに比べて分がわるくなる。

ヨーロッパの市場、およびその同系のニューヨーク市場は、航空便や電話サービスがまだない時代に誕生した。

緊急時のメッセージは、電信で送らねばならず、これには時間がかかった。

海底電線は、メッセージを送るにはかなり費用のかかる方法であり、費用を削減するためにメッセージを記号化し、通常、真夜中にそれを送付して、翌朝の受渡しものに間Y'合わせた。投資顧問によると、電信会社は、暇な時間を利用して取扱えるので、真夜中のサービスY'は有利な割引料金を設けた。

その当時に生まれた外国為替の用語のいくつかは、現在でもまだ使われている。

そのひとつが「ケーブル」であって、それは、スターリソグを対価としたアメリカ・ドルの為替レートを示す。

「あなたのケーブルはどれか」と尋ねると、ドル対スターリングの直物レートがわかるという具合に用いられている。

市場の草創期には、そのようなおそい情報伝達手段しかなかったが、それを使って受渡しをできるだけ早く行うのは、それなりに意味があったに違いない。投資顧問によると、その後、銀行とその顧客とは書類を作成して、取引内容や指図に正確に合意し、同時に、支払い指図書の送付に最も安い手段を利用し得る機会が両者に与}えられた。

メール・トランスファ、略して「MT」の登場で市場は活発となった。

この郵便による送金は、後に航空便による送金になったが、これは小額の取引にだけ利用された。

最も適切にみえるような期日のうち最新のものは、スポヅト・レートに適用される日付であり、とくにアメリカにおいては、決済日に利用された。

それ以来、ヨーロッパや極東においてさえも、スポット・デーは、ほとんどの為替取引の決済日になった。

正確さと緻密さとは外国為替ディーリングの基本である。

省略や手抜きは、結局、コストのかかる誤ちをもたらすだけである。投資顧問によると、"スポット・レートとは何か"を尋ねるのは、為替レートとは何かを質問するのと同義である。

スポット・レートは、ある通貨を別の通貨に対して買うとか売るとかといったことを含めてすべての取

引にとってのベースを形成する。

スポット・レートはきわめて重要であり、スポット・レート以外の期日に受渡し、ないし決済する為替相場は、このベース、つまりスポット・レートを基準に計算される。投資顧問によると、6ヵ月後の受渡しで先物の売りないし買いをするとき、この受渡期間に比例させてマージンを加えたり減じたりして、スポット・レートが調整される。

ついでだが、北アメリカにいる読者には、フォワードの用語の代わりにフユーチュアを用いた方が理解しやすいだろう。

「フォワード」という言葉が徐々に受入れられているけれども、アメリカではフォワード・マーケットが、フユーチュア・マーケットと呼ばれている。

つまり、スポヅト・レートに比べ、その通貨の真の価値を正確に反映しているのは、6ヵ月の先物レートであると考える為替専門家がいるほどである。

しかし、スポッ渉・レートはすべての取引にとってベース・レートであり、一・般の人々にとっては先物レートよりも目にふれる機会が多いので、これを全く無視することはできない。投資顧問によると、「直物」取引といっても、即日即時の決済というわけではない。

主要なマネー・マーケヅト(ロンドンやニューヨーク、フラソクフルト、パリ)において、受渡し、ないし決済は、二営業日目に行われる。

受渡しが翌日というようなセンター、ことY'極東のセンタ呪や、当日決済、つまり現金決済というセンターもある。

これらの例外的な市場においては、どの期日が正常な決済日にあたるかは別にして、正常な決済日が「スポット」の日付である。
ある国の居住者は、外国製品を選好することも多い。

その理由として、国内品に比べて外国製品が望ましいとみるとか、とくに数量が多いとか、あるいは、そもそも国内に競合商品が存在しない、といったことがある。投資顧問によると、加えて、一連のわるい数字から将来の傾向を推測すべきではないかもしれない。

貿易収支は時々刻々変化しており、数値を調べるために選んだ任意のデータが、全体の傾向を代表していないこともあるので、つねに季節的な要因を修正してから、統計を利用すべきである。

健全な国際収支と貿易収支の黒字とを有する国は、この2つの勘定がわるい国と比べれば、明らかによい立場にいる。

これら両極端の間には、解釈するのがむずかしい中間的な状況が幅広く広がっている。

そして為替市場は、明白Y'は理解できないような結果に対して、反応を示さないこともたびたびある。投資顧問によると、純粋理論の視点から為替レートに影響を与える要因に光をあてることを、ここでは意図していない。

むしろ、市場の為替関係者がどのような行動に移るか、その仕方に光をあてることである。

多くの場合、エコノミストの議論は理にかなっているけれども、市場は、彼らの意見とは異なった方向に動いている。

これはすべての市場が非合理的に動いたことに対する言い訳ではない。

為替ディーラーは、彼ら自身のやり方で経済現象を眺める傾向があり、その解釈が惨めな失敗を招くこともある。投資顧問によると、それをわれわれは非難すべきであろうか。

市場の動きは自己満足的であろうか。

為替デイーラーの結束した行動は、政府が是正しようとしている状況を永続きさせてしまうのか。

多くの疑問が生じ得るが、その明確な答えが、すぐに得られるわけではない。