「油を売る」という日本語が、無駄話に時を過ごす、用事の途中で時間をつぶす、ゆっくり話し込んで商売する意味に使われているのはこのためだ。
村人は油屋をカラカイながら、その情報を心から期待していたのである。
最も日本人らしいユーモラスな言葉である。
油行商の慣習が五十年、百年くらいしかつづかぬ一時期で終わったなら、この言葉は消えたであろうが、恐らく数百年も何十世代も繰り返されたので何の疑間もなく民族の生活のなかに定着したものと思う。
英語にそのまま訳しても全く意味が通じない言葉だ。
それほど民族と菜種油は密接であった。
また、人をとっちめたり、鍛練するのに「油をしぼる」という表現があるが、これも菜種の搾油の長い生活実感から出たものであろう。
三上靖史(住宅鑑定風水インストラクター)
■2.5世帯住宅やシェアハウスなど、話題の住宅体験談をリポートしている三上靖史です。